まずお伝えしたいこと
肺炎球菌は、肺炎の原因となるだけでなく、菌血症(敗血症)や髄膜炎など命に関わる重い感染症(侵襲性肺炎球菌感染症:IPD)を起こすことがあります。
とくに高齢の方や基礎疾患のある方では、感染した場合に重症化・入院につながりやすいため、肺炎球菌ワクチン接種は「転ばぬ先の杖」として強くおすすめします。ただし、肺炎の原因は肺炎球菌だけではなく、誤嚥性肺炎なども多いため、ワクチンで肺炎がすべて防げるわけではありません。それでも、肺炎球菌による重症化を減らすことは、高齢者医療において大きな意味があります。
肺炎球菌ワクチン接種が特に勧められる方
次に当てはまる方は、肺炎球菌感染症で重症化しやすく、ワクチンのメリットが大きくなります。対象の方は接種をぜひ検討してください。
1)65歳以上の方(最優先)
• 年齢とともに肺炎球菌感染症のリスクは上がります。
• 神戸市の定期接種(公費)の対象となる方は、接種できる期間内に受けることを強くおすすめします。
2)慢性の病気(基礎疾患)がある方
・ 慢性呼吸器疾患(COPD、喘息、間質性肺炎など)
・心臓の病気(心不全、虚血性心疾患など)
・ 糖尿病
・慢性腎臓病(CKD)
• 慢性肝疾患
・ 脳卒中後などで飲み込みが弱い方(誤嚥しやすい方)
• 免疫が低下している方、脾臓摘出後/機能的無脾など(主治医と要相談)
3)肺炎にかかることがその後のADL低下に直結する方
• 体力が落ちている方(フレイル)
• 介護が必要な方、介護サービスを利用している方
• 施設入所中の方
・過去に肺炎で入院したことがある方
4)喫煙者(または長年の喫煙歴がある方)
喫煙は肺炎のリスクや重症化リスクを高めます。禁煙とあわせて、ワクチン接種も強くおすすめします。
肺炎球菌ワクチンの種類(当院で扱う主なワクチン)
肺炎球菌ワクチンには大きく分けて
• PPSV(莢膜ポリサッカライドワクチン)
• PCV(結合型(コンジュゲート)ワクチン)
の2タイプがあります。接種歴によりおすすめが変わります。
1)ニューモバックスNP(PPSV23)
• 23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンです。
• 神戸市の高齢者肺炎球菌の定期接種(公費)で、現行はこのワクチンが使用されています。
• 神戸市の定期接種は原則として「初めてニューモバックスNPを接種する方」が対象で、過去に接種歴がある方は対象外となります。
• これまで、約5年で予防効果が減弱するため、接種は5年ごとに行っていくことが推奨されていました、今後はより予防効果が高いPCVを中心とする接種体制となるため、現在では再接種は推奨されていません。
2)プレベナー20(PCV20)【20価結合型ワクチン】
ワクチンの特徴(結合型とは)
PCV20は結合型(コンジュゲート)ワクチンです。結合型ワクチンは、多糖体抗原をタンパクに結合させることで、免疫の仕組み上、免疫記憶が期待できるタイプとされています(プレベナー13など従来のPCVと同様の考え方です)。
PCV20がカバーする血清型(20価)
PCV20が含む血清型は次のとおりです。
1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、33F
PCV20の血清型カバー率(国内データ)
※ここで示す「血清型カバー率」は、原因血清型のうち、 そのワクチンに含まれる血清型が占める割合で、 有効率(効果の大きさ)そのものではありません。
■ 成人IPD(侵襲性肺炎球菌感染症)65歳以上(2013〜2024年、4期間)
2013–2015:69%/2016–2018:64%/2019–2021:53%/2022–2024:50%
■ 肺炎球菌性肺炎(2019〜2022年)
65歳以上:42.8%
当院での位置づけ
2026年4月以降、高齢者定期接種の制度変更に伴い、定期接種としてPCV20接種を実施する方向で準備しています(最終的には自治体の公表に従います)。
3)キャップバックス(PCV21)【21価結合型ワクチン】
ワクチンの特徴
PCV21も結合型(コンジュゲート)ワクチンです。PCV21は安全性・免疫原性がPCV20と同等である一方、血清型カバー率はPCV20より優れています。
PCV21がカバーする血清型(21価)
PCV21が含む血清型は次のとおりです。
3、6A、7F、8、9N、10A、11A、12F、15A、(de-O-acetylated)15B、16F、17F、19A、20、22F、23A、23B、24F、31、33F、35B
※(de-O-acetylated)15Bは、15Cに対する免疫応答も期待される旨の注記があります。
PCV21の血清型カバー率(国内データ)
※ここで示す「血清型カバー率」は、原因血清型のうち、 そのワクチンに含まれる血清型が占める割合で、 有効率(効果の大きさ)そのものではありません。
■ 成人IPD(65歳以上)(2013〜2024年、4期間)
2013–2015:79%/2016–2018:79%/2019–2021:75%/2022–2024:78%
■ 肺炎球菌性肺炎(2019〜2022年)65歳以上:72.3%
当院での位置づけ
当院では、すでにPPSV23(ニューモバックスNP)を接種済みで、PCV(結合型)を一度も接種していない方に、任意接種(自費)としてPCV21(キャップバックス)を推奨していく方針です。
神戸市の高齢者肺炎球菌 定期接種(~2026年3月31日まで)
神戸市の定期接種(公費)は、原則として接種券(接種券ハガキ)に基づいて受ける制度です。
(転入・紛失などで接種券がない場合は、事前に発行手続きが必要です。)
詳細は神戸市HPをご確認ください。
対象者(神戸市)
• 神戸市民で、初めてニューモバックスNP(PPSV23)を接種する方
o 65歳の方
o 60~64歳で一定の障害要件に該当する方
自己負担額(神戸市)
• 4,000円(無料対象の方は証明書が必要です)
持ち物(神戸市)
• 接種券ハガキ、本人確認書類(マイナ保険証・資格確認証)
• (無料対象の方のみ)証明書類
• (60~64歳で要件該当の方のみ)身体障害者手帳
2026年4月以降の制度変更後の高齢者定期接種について
当院では、2026年4月からは「65歳になる年度の方」への定期接種としてPCV20を接種する想定で準備します。
※実際の運用(接種券の様式、自己負担額、対象者など)は神戸市の公表に従い、当院の案内を更新します。
当院での接種の考え方(定期接種/任意接種)
(A)神戸市の定期接種(公費)対象の方
・2026年3月まで:PPSV23(ニューモバックスNP)
・ 2026年4月以降:PCV20(プレベナー20)
(B)任意接種(自費)をご希望の方
定期接種(公費)の対象外でも、年齢・基礎疾患・接種歴に応じて任意接種(自費)をご提案します。
当院では、PPSV23接種済みでPCV未接種の方に、PCV21(キャップバックス)を推奨していく方針です(費用は未定)。
接種料金
・ニューモバックスNP(PPSV23)
o 定期接種(神戸市):自己負担 4,000円(無料対象の方は自己負担なし)
o 当院 自費:8,200円(税込)
• プレベナー20(PCV20):(自費料金はお問い合わせください)
• キャップバックス(PCV21):未定(お問い合わせください)
ご予約・お問い合わせ
ワクチンはお問い合わせ後に取り寄せします。接種をご希望の方は、受付へご相談ください。
接種歴が分かるもの(接種済証、他院の記録など)があれば受診時にお持ちください。
かわクリニック TEL:078-781-1838