神戸市垂水区|かわクリニック|内科・消化器内科

かわクリニック

ブログ

健康のこと、日常のことなどを発信しています。

【withコロナ】COVID-19対策がインフルエンザ予防にも有効?!(同時流行を避けるための対策とは?)

2020/9/29
2119066
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、第2波と呼ばれる流行が続いています。今月は神戸市内の小学校で集団発生がありました。兵庫県内では連日2桁の新規感染者が発生しており、感染収束には至っていません。

そんな中でも経済と感染防御のバランスを取りながら、政府の「新しい生活様式」のもとで、「Go to Travel」「Go to Eat」のキャンペーンが行われています。また、映画館や劇場やスポーツ観戦などでの観客の数の制限も緩和されています。
経済活動を止めずに感染抑制を図ることは必要ではありますが、一部ではクラスターの発生が相次いでおり、引き続き経済活動と感染防御のバランスを取る難しい舵取りが続いていきます。
 
 日本では風邪やインフルエンザが少ない夏場を過ぎ、これから冬を迎えます。例年12月から2月頃にかけて風邪とともにインフルエンザの流行が見られます。インフルエンザは急な38度以上の発熱や倦怠感・咳・鼻水・咽頭痛が特徴的な症状として知られていますが、これらはCOVID-19でも見られ、初診時に鑑別を行うことは困難と言われています。このため、COVID-19とインフルエンザの流行が重なる(ツインデミックと言うそうです)と、多くの発熱者が受診することになり、医療機関は非常に負担が大きくなります。COVID-19の重症者を早く治療するためにも、ツインデミックを起こさないように対策が必要です。

 そんななか、日本でのインフルエンザの発生が昨年の1000分の1程度にまで減少しているとの発表がありました。また、現在冬から春を迎えている南半球のオーストラリアでは、今季のインフルエンザの患者数が記録的に少なかったという報告もあります。今回の記事では、その内容の紹介と、日本でこれから採るべき対応策を考えてみます。

オーストラリアでのインフルエンザの流行状況

南半球のオーストラリアでは6月から8月が冬になります。冬の寒い時期に流行するインフルエンザは、オーストラリアでは6月から8月が流行シーズンとなります。
今年のオーストラリアのインフルエンザの流行状況を、オーストラリア保健省のサイトから情報を見てみましょう。
2020オーストラリアインフルエンザ流行状況
2020インフルエンザ検査陽性率
上のグラフはオーストラリアでのインフルエンザの検出状況を週別に集計し、グラフにしたものです。
例年シーズン中には1週間に10,000人から20,000人の感染診断がなされるのに対し、赤線の2020年シーズンでは過去数年と比較しても極端に少ないことがわかります。
特に第12週(3月下旬)からはほとんど感染者が見られません
下のグラフはインフルエンザの検査数を実線にして示していますが、この冬も多くのインフルエンザ検査が行われているにも関わらず、検出されていないことがわかります。
これらから例年と違い全く流行が起こらなかったことがわかります。
では、COVID-19対策を行うこととインフルエンザ患者の減少と関係があるのでしょうか?

オーストラリア(特にビクトリア州)でのCOVID-19の感染者数と対応策

オーストラリアのWikipediaによると、オーストラリアでのCOVID-19の感染者数の推移は以下のとおりです。
オーストラリアCOVID-19新規感染者数
オーストラリアは日本と同様に第1波の感染流行が、主にシドニー近郊を中心に3月中旬から4月下旬頃にありました。
その後収束していましたが、6月からは第2波の感染流行がメルボルンを中心としたビクトリア州で進行しています。
第2波はビクトリア州では8月4日に687人のピークを迎えましたが、現在は2桁まで低下し、収束してきているようです。

オーストラリアでも日本と同じようにCOVID-19対策が行われていますが、オーストラリアでは各州がそれぞれで対応を行っているとことが日本との違いです。
各個人への感染防止の呼びかけは主に、20秒以上の手洗い、咳エチケット、1.5m以上のソーシャルディスタンスの3点のようです。
日本とは違い、最近までマスク着用はあまり呼びかけられていなかったようですが、今は咳などの症状がある人へはマスク着用が推奨されています。

現在の感染の中心であるビクトリア州の最近の対応策は、一時は夜間外出禁止という厳しい措置が取られましたが、感染者数の減少に伴い、メルボルン中心部では9月28日で解除になっています。しかし依然として飲食店はテイクアウトのみであったり、自宅から半径5kmまでの移動しか認められないという状況とのことです。

COVID-19対策がインフルエンザ予防にも有効

インフルエンザは、感染者の咳やくしゃみの飛沫を介して、ヒトからヒトへ感染が広まっていきます。今年のオーストラリアの現状を考えると、COVID-19の感染防止策として、手洗いの徹底やソーシャルディスタンスの確保などの対策が取られた結果、飛沫感染であるインフルエンザの流行を抑制できたと考えていいと思います。
また、インフルエンザワクチンの予防接種を行うことは言うまでもありません。

日本ではまだ第2波は収束せず、感染者数は下げ止まりの状況が続いています。インフルエンザとCOVID-19のツインデミックを避けるためこれまでの以下に示す感染対策を油断することなく継続していく必要があります。

・十分な換気など、「3密」を避ける

インフルエンザもCOVID-19も、持病のある高齢者は重症化しやすいことがわかっています。
持病のある人は治療を継続し、そうでない人も健診の機会をうまく利用して、病気の早期発見・治療を行っていくことも重要です。

withコロナの状況では「かかりつけ医」の役割がこれまで以上に重要となります。
健康に不安のある方は、どうぞ遠慮なくご相談ください。

インフルエンザ予防になる栄養素とは?

2020/12/31
  年末になり気温が下がり、寒さが体に堪える季節になってきました。寒い時期に流行するインフルエンザですが、マスコミの報道にもあるように今年は流行が例年より早いようです。当院でもすでに多くのインフルエンザ患者さんを診療しています。インフルエンザの説明項目にも記してますが、感染予防対策はまずはインフルエンザワクチンの予防接種と流行時期には手洗いや部屋の加湿の徹底などがありますが、栄養管理も重要となります。先月、養命酒にも含まれる「クロモジエキス」がインフルエンザ感染患者の抑制ならびに風邪症状の有症期間を有意に短縮した(愛媛大学プレスリリース)との報告がありました。今回はインフルエンザにかかりにくくするための栄養療法について考えてみます。

ビタミンDのインフルエンザに対する予防効果

インフルエンザの感染予防に最も効果があることが判明している栄養素はビタミンDです。ビタミンDは骨を作る栄養素として知られていますが、それ以外にも免疫作用がありインフルエンザ予防効果があることがわかっています。
2010年東京慈恵会医科大学浦島光佳先生発表の日本の子供を対象とした研究論文では、ビタミンD3が1,200単位入ったカプセルを摂取させると、摂取しないグループよりもインフルエンザの発症が42%低い結果が出ています。
参考文献
Randomized trial of vitamin D supplementation to prevent seasonal influenza A in schoolchildren.
Urashima M1, Segawa T, Okazaki M, Kurihara M, Wada Y, Ida H. Am J Clin Nutr. 2010 May;91(5):1255-60. doi: 10.3945/ajcn.2009.29094. Epub 2010 Mar 10.

また、2009年のアフリカ系アメリカ人208人を対象にした論文では、ビタミンD3 800単位を2年間摂取したあとに、1年間に1,000単位のビタミンD3の服用した群とプレセボを服用した群の比較研究では、観察期間3年間でカゼやインフルエンザ症状を生じた人数を比較するとビタミンD3服用群では8名で、プラセボ服用群では26名でした。ビタミンD濃度が低いとインフルエンザに感染しやすいことが示唆されます。
参考文献
A randomized controlled trial of vitamin D3 supplementation for the prevention of symptomatic upper respiratory tract infections.
Li-Ng M1, Aloia JF, Pollack S, Cunha BA, Mikhail M, Yeh J, Berbari N. Epidemiol Infect. 2009 Oct;137(10):1396-404. doi: 10.1017/S0950268809002404. Epub 2009 Mar 19.

ビタミンDは日光が皮膚に当たることで体内で合成されます。他に食事から摂取することで得られます。食品としてはサケやイクラ・イワシといった魚介や、キクラゲなどのきのこ類に多く含まれます。日本人の1日に必要とされるビタミンDの摂取量は5.5μgでほとんどの日本人は摂取量を満たしているといえますが、魚をあまり食べない人は不足している可能性があります特に日照時間が少ない冬場は皮膚からの合成が少なく、ビタミンDが不足している可能性があります。脂溶性ビタミンであるため過剰摂取には注意が必要であるものの、サプリメントを使い補充することを考えてもいいでしょう。
49bf5961eaf247b85c6cf3a03a8ab9a3_s
d5301ccdaf74e5e11954adbee21a8628_s

カテキンのインフルエンザに対する予防効果

緑茶にはポリフェノールの一種であるカテキンが多く含まれます。2009年シーズンに医療従事者にカテキンとテアニンを含むカプセルを摂取させてインフルエンザの発症者数をみた研究ではカテキン・テアニンの服用群でインフルエンザの発症が少ないという結果でした。このことから緑茶を飲むとインフルエンザの予防ができるかもしれません。(緑茶にはカフェインを含みますので、子供や高齢者などは飲む量や時間に注意が必要でしょう。)

ビタミンAやビタミンCのインフルエンザに対する予防効果

ビタミンAやビタミンCにもインフルエンザの予防効果があると考えられていますが、ビタミンDやカテキンほどには十分に予防の根拠はないようです。ビタミンAは粘膜を正常に維持するのに必要な栄養素で、不足すると夜盲症の原因になります。のどや鼻の粘膜のウイルスに対するバリや機能を維持するためにも不足しないようにする必要があります。ビタミンAはうなぎや鳥や豚のレバーなどに多く含まれます

ビタミンCは大量摂取で免疫を活性化することが示唆されていますが、日常的な摂取で効果があるという根拠はあまりありません。

インフルエンザ予防の食事メニューは?

インフルエンザ予防に一番効果があると考えられる栄養素はビタミンDです。ビタミンDを多く含む食材をうまく取り入れることで効果が期待できそうです。例えば夕食にサケのムニエルやイワシの焼き物とキクラゲの中華サラダといった感じでしょうか。ビタミンAの補充にはうなぎの蒲焼もいいかもしれません。(ウナギの旬は夏ではなく冬です。)

お問合せはTEL: 078-781-1838
かわクリニック